◆牡蠣の養殖の方法

牡蠣の養殖法には、歴史上様々な改良が施されており、石蒔式(いしまきしき)、地蒔式(ちまきしき)、ひび建て式養殖法、杭打垂下法(くいうちすいかほう)などといった様々な方法があるが、現在の日本において主流となっているのは、
①「筏式垂下法」(いかだしきすいかほう)②「延縄式垂下法」(はえなわしきすいかほう)

 

 

①「筏式垂下法」

筏に牡蠣の種がついている貝殻と竹やビニールの管などを交互に通した連をぶら下げ、成育を待って収穫する方法。
漁場を立体的に使えるため、非常に生産性が高いが、大きな波や揺れには弱いため波浪が穏やかな内湾地区に適している。

 

 

②「延縄式垂下法」

海面に浮かべた樽浮(プラスチックや木など)の両端をロープで連結し、このロープに牡蠣を連ねたものを垂下していきます。
耐久性が優れているので、風浪の強い湾口や外洋で用いられています。宮城県では生産量の約9割が延縄式です。

 

 

◆牡蠣の育て方

①採苗(さいびょう)
②抑制(よくせい)
③本垂下(ほんすいか)
④育成(いくせい)
⑤収穫(しゅうかく)
⑥浄化

 

 

①採苗(さいびょう)

採苗とは牡蠣の幼生(赤ちゃん)を海中から採取することです。

夏に卵からかえった牡蠣の幼生は、約2週間の間海の中を漂いながら過ごし、その後、海水中の固着物に付着します。

そこでこの時期にホタテの貝殻(カルチ又はコレクターと呼ばれる)を海中に入れておくと、うまい具合に牡蠣幼生(0.3mm)が付着します。

このように幼生を付着させることを採苗といい、毎年7月中旬から9月中旬まで行います。

 

 

 

 

 

 

 

 

②抑制(よくせい)

抑制とは一言でいうと「稚貝を鍛える工程」です。

潮の満ち引きを利用して、「潮が満ちた時には海のプランクトンを食べさせる」「潮が引いた時には陽に当てて貝を開け閉めさせる」このようにして稚貝を鍛えています。

採苗した牡蠣の種は、採苗連のまま沿岸の棚(抑制棚)に移します。この棚は干潟の時よりも高い位置にあるため、採苗連は海水中に浸かっている時間が短くなります。

抑制を行う理由は、「牡蠣が大きくなりすぎると翌年夏の産卵後に死ぬことが多い」「環境の変化に強い抵抗力をつけさせる」「次の工程にいく牡蠣のへい死率を減らす」

 

 

 

 

③本垂下(ほんすいか)

牡蠣を海中に入れる工程です。

採苗連からホタテ貝を外して新しい針金(長さ9m)に1枚ずつ移し替えて垂下連を作ります。これを「通し換え作業」といいます。

1つの垂下連には約50名のホタテ貝を使います。

できた垂下連は次々と筏に吊るしていって、1つの筏に約600本が吊るされます。

 

 

 

 

 

 

④育成(いくせい)

牡蠣を育てる工程です。

本垂下を終えた牡蠣は、収穫の時期まで成長を続けます。

本垂下してから収穫するまでの間、牡蠣が死なないように、有害な生物がつかないように、そして身入りがよくなるように様々な工夫をしています。

その代表的なものに「深吊り育成」と「直吊り育成」があります。

 

 

 

 

⑤収穫(しゅうかく)

10月から11月になると収穫が始まります。

垂下連は9mにも及び、牡蠣も大きく成長しているため、とても重くて人の手では引き上げられません。船に約10mの長い柱を立てて、ウィンチを用いて巻き上げて収穫します。

収穫された牡蠣は殻のまま洗浄器で洗い、泥や付着生物(ムラサキガイ、ホヤなど)を取り除きます。

さらに1日きれいな海水プールに置き、牡蠣を奇麗にします。

翌日、牡蠣は1個ずつ貝柱を切って殻を開け、中の身を取り出します。むき身は減菌海水や洗浄海水でよく洗い出荷されます。

 

 

 

 

 

 

 

◆シングルシード
殻のサイズやデザイン(カタチ)をコントロールできるように、牡蠣の殻を細かく砕いたものなどに、牡蠣の幼生を一粒一粒付着させ、約2ミリ~2センチ程度になるまで成長させたもの。
もともと牡蠣の幼生を付着させたものをシード(種)といい、一粒一粒付着させることから、シングル(一粒)、あわせて「シングルシード」と称されるようになった。 日本では「一粒かき」とも称されます。

 

 

◆シングルシードの生産方法
専用のプール(ファクトリー、ハッチェリー)で人工的に採苗する方法と、天然で採苗する方法の2種類があります。
天然の場合は、一度付着するとはがれないようにするためのホタテ貝ではなく、ある程度の大きさになったらすぐにはがせるツルツルのホタテに似せたプラスティック採苗機を、ホタテ殻と同様に海中に仕掛け、海中を浮遊している幼生を付着させ、それをはがすことで生産します。
牡蠣は、もともと卵から孵ったあと幼生として海中を浮遊し牡蠣や岩などに付着します。
その性質を利用して、長らくホタテ貝の殻を幼生の浮遊するエリアに仕掛け採苗(付着させる)するカルチ法がとられていました。
カルチ法は、牡蠣を大量に養殖することができ養殖の革命とも言われたが、殻のカタチやサイズ、デザインをコントロールするのが難しく、欧米で主流の殻付き生牡蠣を生産するのに適してはいませんでした。
カルチ法は、ホタテ貝の殻1枚につき30~50個の幼生を付着させたものを養殖に使うので、牡蠣同志が互いにせめぎあい、殻のカタチや身入りが安定しにくくなります。

また、殻付き生牡蠣で出荷するのに際し、殻をできるだけキレイにしておくことが重要ですが、30~50個以上付着している塊であることから、養殖途中でフジツボや海藻類が大きくなる(はがれにくくなる)前に、洗うことが難しく、水揚げ後、殻付きで出荷する場合、殻を奇麗にするのに非常に手間がかかっていました。
なんとか殻付き生牡蠣として、殻が「きれいで、同じサイズ、同じデザイン」のものを提供できないものだろうか・・・
そこで、シングルシードが活躍します。
一粒一粒をバラバラで育てるために数量をコントロールして、袋やカゴに入れ一個一個に空間的猶予を持たせながら育てることが可能
となります。また出荷までに何回かサイズ選別を行い、大きさごとにカゴを入れ替えることでサイズをコントロールすることが出来ます。

◆シングルシードのメリット
・安定した種苗生産が可能
・正確な生産数の把握ができる
・収穫時にホタテ貝の貝殻から牡蠣を外すといった剥離作業がないので効率がよく生産性が高い

 

◆シングルシードのデメリット
・種苗サイズが小さいので管理に手間がかかる
・生存率を計算に入れると、種苗価格がとても高い
・上記のことから高価なブランド牡蠣として出荷する必要があり、市場が限られてしまう

 

⑥浄化

◆牡蠣体内の毒の排除

オストレアで扱う牡蠣は、全ての生産地にて紫外線殺菌装置を導入してもらっており、20時間以上の殺菌を徹底して出荷してもらっています。
海中で生育する牡蠣は、餌と一緒に大量の海水を吸い込みますが、その海水に菌やウイルスがいると吐き出しきれず、牡蠣の内臓に残ってしまうことがあります。
「牡蠣にアタル」と表現される食中毒は、牡蠣自身が持つ毒ではなく、それらの菌やウイルスが引き起こすらしい・・・ことが最近の研究でわかってきました。
下記図の方法は、紫外線を照射し殺菌した海水の中で一定時間以上牡蠣を飼育することにより「よりきれいな水を吸い込み(それ以上の菌を取り込むことなく)、身の中の不要物を吐き出させる」というものです。
薬品ではないため、牡蠣を傷めたり臭いを残すことのない殺菌法です。

 

 

 

 

 

 

◆参考資料・動画

②海からのおいしい贈り物 -瀬戸内海・広島県- 牡蠣の養殖
(science channel) 13:59
③福岡県農林水産部 豊前海 牡蠣養殖法 15:34
④かなわ水産 にほんもの 3:21
⑤いわての漁業【養殖業編(カキ・ホタテ)】岩手県公式動画 4:36

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